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置賜あれこれ 夕鶴の里

第1話「夕鶴の里の概要」

 

南陽市の西部、漆山地区の織機川そばに、古くから民話「鶴の恩返し」を開山縁起として伝承されている「鶴布山珍蔵寺」があります。

この地区には、鶴巻田や羽付など、鶴の恩返しを思い起こさせる地名が残っています。

「夕鶴の里」は、地域に口伝えで残されてきた数多くの民話や昔話を後世に伝えていくためにつくられました。「夕鶴の里資料館」と民話伝承館「語り部の館」の二つの施設からなり、平成5年4月に開館しました。

夕鶴の里資料館は、かつて生業として営まれていた青苧や養蚕をはじめ、近代製糸に関する資料の展示を行っているほか、映像ホール「夕鶴座」では、鶴布山珍蔵寺に伝わる伝説民話「鶴女房」やアニメーションなどがご覧になれます。

語り部の館は、折り鶴をイメージに新築されました。

200名収容できる語り部ホールでは、民話会ゆうづるの語り部による民話口演を聞くことが出来るほか、機織り体験や蕎麦打ち体験ができ、子どもから大人まで楽しめる生涯学習施設となっています。

 

 

第2話「鶴布山珍蔵寺の歴史」

 

国立公文書館に鶴城地名選という古文書が残されています。

文化元年・1804年に編まれたもので、漆山の珍蔵寺の由来を述べた一節があります。

 「北条(ほうじょう)郷(ごう)漆山に在(あ)り、珍蔵寺は本(もと)は金蔵寺(きんぞうじ)と云(い)えり」

と始まる「鶴布山珍蔵寺」は、仙台の伊達家と縁の深い、曹洞宗金剛山輪王寺・極堂宗三 和尚によって、室町時代の寛正元年・1460年に開山された古刹であると伝えられています。

その古文書には、「鶴の恩返し」の話が書き記されていて、地名に「鶴巻田」や「羽付」あるいは「織機川が流れている」など、鶴に因んだ民話を思い起こさせるものが数多く残されています。

 

珍蔵寺に伝わる鶴の恩返しの主人公 金蔵は、鶴との約束を破ってしまい申し訳ないことをしてしまったと、お寺を建てて鶴が織った『おまんだら』をお納めしたということです。

寺の名前も金蔵寺と自分の名前をつけて建てましたが、いつの頃からか、鶴の織物のあるお寺ということで「鶴布山珍蔵寺」という名前になったといわれています。

 

珍蔵寺には、樹齢約550年の大銀杏や仏足跡と歌碑があり、境内は山門と庭園が調和し心があらわれるような空間です。

また、梵鐘には鶴の恩返しの話が彫られています。

石段入口両側の石門には「仙鶴留毛伝軼事・古経在寺是珍蔵(せんかくりゅうもういちじをつとう・こきょうてらにそんすこれちんぞう)」と刻まれ、「鶴の恩返し」伝説との深いかかわりを今に伝えています。

 

 

第3話「夕鶴の里資料館」

 

夕鶴の里資料館は、大正14年に、製糸工場の敷地内で使われていた3階建ての『まゆ蔵』を一部改造して建築されました。平成28年11月には、文部科学省の登録有形文化財となっています。

館内1階には、囲炉裏を囲んで民話が語られていた頃の農家の家庭を復元した「金蔵の家」と障子に機を織る影絵が映し出され、鶴の恩返しの民話を想い起こさせてくれます。

映像ホール「夕鶴座」では、鶴布山珍蔵寺の伝説を浄瑠璃風にアレンジした創作民話「鶴女房」や「白竜湖の琴の音」「鶴の恩返し」のアニメーションなどを見ることができます。

 

2階では、かつて生業として営まれていた青苧や養蚕、繰り糸、織りや信仰などの民俗資料を展示。

この地方に実在した人物の愉快なとんち話「佐兵ばなし」を映像で見られるシステムもあります。

 

3階には、明治から昭和初期に栄えた近代製糸に関するものを常設展示しているほか、期間限定の特別展や各コーナー毎に「全国の郷土玩具展」や「鶴の恩返しの切り絵」の展示もあります。

また、むかし懐かしいメンコやお手玉、けん玉など実際に遊べるものを設置しています。

 

 

第4話「民話会ゆうづるの語り部」

 

南陽市漆山には、鶴布山珍蔵寺の開山縁起として「鶴の恩返し」が語り継がれてきました。

貴重な民話や昔話を後世に引き継いでいこうという機運が高まり、平成3年、語り部として活動していた故川合久男さんを代表に「民話会ゆうづる」が結成されました。

 

その後、平成5年4月に夕鶴の里語り部の館がオープン。200名収容できる「語り部ホール」を拠点に、民話会ゆうづるの語り部13人が地域に伝承されてきた民話を中心に、各地に語り継がれてきた昔話を語っています。

 民話会ゆうづるの語り部は、年齢性別を問わず、聞き手であるお客様に合わせて自由に民話口演をしています。

『後世に伝えよう民話のこころ』を合言葉に、語り部養成講座の開講をはじめ、小中学校や福祉施設、各地区のサロン等への出前口演を行っているほか、民話まつりの開催など民話や昔話の普及活動に鋭意取り組んでいます。

 

 

第5話「夕鶴の里の活動と取り組み」

 

夕鶴の里は、子どもから大人まで年齢性別を問わず「見る」「聞く」「体験する」をキーワードに運営を行っています。

「見る」

資料館内に展示している数多くの民俗資料、当時の古民家を復元した「金蔵の家」、障子には機織りしている影絵が映し出されます。

映像ホール「夕鶴座」では、「鶴女房」やアニメーション「白竜湖の琴の音」「鶴の恩返し」などを大型スクリーンで見ることができます。

かつて生業として営まれていた青苧や養蚕、繰り糸、織り、信仰に係る民俗資料、明治から昭和初期まで製糸業の町として栄え「羽前エキストラ」という世界に通用する生糸を産出した資料の展示、期間限定の特別展などもあります。

「聞く」

語り部の館「語り部ホール」において、地元に伝承されている民話口演は勿論、各地で語られている昔話などを聞くことができます。

「体験する」

予約制で、昔懐かしい機織り機を使っての機織り体験や蕎麦打ち体験のプログラムがあります。

 

近年は、インバウンドの面から、鶴の恩返しの民話を英語、韓国語、繁体語に翻訳した字幕入りスライドに作成したものを投影し、語り部の口演を聞きながら日本の文化を味わっていただいています。