置賜あれこれ 白布の史跡
第1話「白布温泉の歴史と名前の由来」
白布温泉は、磐梯朝日国立公園の中に位置しています。
白布の名前の由来は、先住民族の言葉で「霧氷のできる場所」という意味から付いたといわれています。
遠い昔、病に侵された白い斑点の鷹が湧き出る豊富な湯につかったところ、みるみるうちに病が治ったことから「白い斑点の鷹の湯」。
山の峰々が白い霧で覆われる光景が多いことから「白峰高湯」。
湧き出る温泉の湯花が白い布を流したように見えることから「白布高湯」など、時代によって呼び名を変えてきました。
白布温泉は、福島の信夫高湯、山形の最上高湯、蔵王温泉とともに奥州三高湯の一つに数えられています。
古くから「三湯湯治」と呼ばれ、三つの温泉全部に宿泊すれば100年長生きできるといわれ、賑わってきました。
今からおよそ700年前、正和3年(1312年)6月12日に、和の国の住人で鎌倉御家人の佐藤宗純が発見したといわれています。
天の恵みに感謝して、毎年6月12日には、温泉祭りを厳かに開催しています。
また、100年ごとの大祭には1体の地蔵尊を奉納して、これまでの感謝と、変わらぬ永遠の湧出のお願いをし続けています。
1番新しいのは、2012年に7体目として奉納されたものです。
第2話「白布三十三観音と八十八か所霊場」
白布三十三観音
東屋旅館24代当主 宍戸惣佐衛門が、西国三十三観音を巡礼し、分霊を受けて、享保14年(1729年)に建立されました。
1800年以前の建立で、1か所に集めた石造りのため、三十三観音としては全国的にも珍しいものとされています。
上杉家の歴代藩主も特に心に留められ、機会あるごとにお参りされました。
境内の石灯ろうの一つは、上杉家の寄進と言われています。
その奥に四国八十八か所巡りの石像も祀られています。
これは、笹野観音の住職が巡礼し、分霊を受けた四国八十八か所の石塔で、昭和50年に完成、安置されました。
四国八十八か所とは、真言宗の開基 弘法大師が42歳の時、四国を巡礼して開いた八十八か所の霊場です。
人間には88の煩悩があり、それを一つ一つ消滅させていくために霊場まわりをしたのです。
また、人の厄災を除く意味で、霊場巡りをするともいわれています。
第3話「温泉の効能と薬師如来尊堂」
白布温泉は、海抜900mの高地から湧き出る天然自噴の温泉です。
湯量も豊富で、毎分1500ℓほど湧き出しています。
硫黄を含んだカルシウム硫酸塩泉で、動脈硬化症、運動麻痺、慢性皮膚病、糖尿病、高血圧症、神経痛などに効果があります。
源泉温度は60度、湯守によって適度な温度に保たれ浴槽に流れています。
薬師瑠璃光如来尊
一切の人間の病気を治す神様で、人々の信仰を集めてきました。
湯治をしながら病気の回復を願っていた白布温泉では、薬師瑠璃光如来尊に手を合わせる人が大勢やってきました。
現在も三軒の旅館の屋敷神として丁重に祀られ、白布の発展を静かに見守っています。
第4話「最上川源流と白布大滝」
山形県は滝大国ともいわれています。
山形県には滝が230程あり、西吾妻周辺にも滑川大滝・火のほえの滝など有名な滝がたくさんあります。
西吾妻のバレーライン中腹にある赤滝・黒滝は、最上川の源流と言われています。
流れ出した沢は、白布温泉地内で美大道沢と湯の入沢と合流し、支流の大樽川となります。
そこから酒田河口まで224kmの流れになり、山形県内の80%を潤しながら延々と流れ続けています。
また、日本三大急流という特徴を持ち、山形県の母なる川として山形の文化を育んでいます。
白布大滝は、最上川本流の最初の滝で最も美しい滝といわれてきたのですが、砂防ダムの建設などにより昔の面影とは変わってきています。
とはいえ、30メートルの高さから2段になって落下する豪快なしぶきは今でも見学者を楽しませてくれます。
春は若葉の美しさ、夏は涼しさを、秋は紅葉に彩られながら水しぶきを上げて流れる白布の大滝はとても迫力があります。
道路から滝までは急な下りでおよそ5分かかりますが、中間地点に展望台があり、そこから滝全体を眺めることができます。
第5話「白布石塔群」
旧白布高湯分校は、関小学校の分校として明治43年に建てられた校舎です。
この校舎の近くに、1000年~1800年頃建てられた石塔が道端に佇んでいます。
石塔群がある場所は、古くから白布温泉の神聖な地として、集落や地域民の繁栄や健康を願い、神々を祀るために石塔を建てました。
地蔵菩薩
延命地蔵、子育て、夜泣き地蔵などと呼ばれそれぞれの願いを込めて手を合わせました。
京塚
一番古い石塔です。法華経の経文を小石1個に1字ずつ墨で書いて埋めた上に建てられた塔で、災いを除き福を願うために建てられました。
子侍塔
子どもが授かるように祈願した塔です。
巳己塔
商売や万物の繁盛を願って建てた塔です。
巳己塔の巳は蛇の意味で、弁天様。己は紀州の紀で、草木の繁茂を表しています。
巳侍塔
商売の繁盛を願います。
庚申塔
人間の体内には3匹の屍、または虫が潜んでいて、庚申の夜、人が眠っている間に抜け出し天に上り、神様にその人の罪や過失を告げて早死にさせてしまうといわれました。
長生きを願い、身を慎んで一晩中眠らないで過ごさなければならないという庚申信仰の塔です。
60日に一度、年に6度の庚申の日があり、60年に1回大祭年があります。